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「なぁリーダー、ちょっと良いか」
右の道を選んだ自分とスポンジ殿はヒソヒソ話をしながら単調な道を進んでいきます。
「どうかしましたか?」
「このパーティ、頑張ってるのは俺とリーダーだけじゃないか」
「いえ、そのようなことは」
洞窟内は我々以外に誰もおらず、湿った空気と薄暗い雰囲気が我々の気分を盛り下げ、足取りはいつもより重くなります。
「特にラスク。そろそろ真剣に考えなきゃならんぞ。チームのために」
「と言いますと?」
「あいつはなにも貢献してないじゃないか。戦闘時もぼーっと立ってるだけで経験値と金だけ稼いでる。正直、腹が立つ」
拳を壁に叩き付けるスポンジ殿に掛けるべき言葉を自分は持ち合わせておりませんでした。
「リーダーもリーダーだ。さっきのはなんだ」
さっきとは、洞窟の前のやり取りを指しているのでしょう。
「ですが多数決だと」
「このパーティのリーダーは誰なんだ!!」
響くスポンジ殿の声はこだまとなって何度も耳に届きます。
「このままだとバラバラになるぞ、俺たち。なぁリーダー、お前は俺たちのリーダーなんだろう?」
反響する声と生温い空気、向けられたスポンジ殿の強い眼差しが頭の中でごちゃごちゃ混ざり考えるのが億劫になりました。
ただ、パーティがバラバラになるというそのセリフだけは自分の胸に刺さります。それは堪らなく嫌なことですから。
「自分が、自分がなんとかします。もっと強くなります、不安を感じさせないくらいに」
目指すは圧倒的な力。その力を持って、パーティを導いていくのです。
自分はスポンジ殿の目も見ずに、話を強引に終わらせます。
「さ、行きましょう。皆が待っております」
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