隠された部屋

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 自分が傷つくことに腹を立てていた、エルサさん。  自分やエルサさんにならともかく、他のひとに殺されたくないと言っていたトーリくん。  わたしを最後まで騙し、偽っていた、おかしなひとたち。  自らの快楽を追い求めるためならば、他者を平気で傷つけるひとたち。  それでも―― 「死んで良かったなんて、思わない……」  体内の血を撒き散らして。こうして望まない形で、死を迎える――  これは、自業自得なのかもしれない。  だけど、やるせない。  二人を思うと、どうしてもそう考えてしまう。  館の主人も。おそらく、その家族たちも。  たくさん並んだ首の持ち主は皆、殺されるに値する理由があったのか。  それとも―― 「ふふ、ふふふふふ……」  他人を傷つけて喜んでいた、サディズムのエルサさんのように。  自傷行為に快感を得る、タナトフィリアのトーリくんのように。  血を見ると興奮してしまう、ヘマトフィリアのわたしのように。  ひとを殺して、恍惚に染まる笑みを浮かべているこのひとも。  自らの快楽のために、こんなことをしているのか……。 「おそらく、エロトフォノフィリアだ」 「エロトフォノフィリア?」 「殺人性愛……殺人や殺害行為に興奮するパラフィリアだ。遺体損壊に快楽を得る人間もいる」 「殺害行為に……」  わたしの血どころの話じゃない――ひとを殺すことが楽しいというのか。 「欲望のままの殺戮――それだけのために、何人もの命が……」 「アラン……」  ぎりりと歯噛みし、笑みを浮かべている女を睨むその横顔は、まるで憎悪――暗い怒りの炎が、見え隠れしていた。  ねえ、アランは探し物をしているって言っていたけれど、それって「物」なの? それとも、まさか……。  あの首の中に、知っているひとでもいたりするの――? 「ふふ……エルサさんの首も、さっさと切らなきゃ。時間が経って手こずると、綺麗に切れなくなるかもしれないし」  うっとりと呟いて、亡霊は、ゆらり。エルサさんの体へ、向かおうとする。  しかし、それをアランが阻んだ。  まるで、今までわたしたちのことなど視界に入っていなかったかのように、男の動きに驚く黒マント。瞬間、邪魔をされたことに怒ったか――舌打ちが聞こえた。 「何? 貴方たちも後でちゃんと殺してあげるから、ちょっと待っててよ」  放たれたのは、苛々している口調。そんなにコレクションが大事なのか。 「聞きたいことがある。お前は、エロトフォノフィリアか。だからこいつらも、この洋館の主も殺したのか」
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