隠された部屋

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「考えてたの、私。キーツをずっと、ずーっと永遠に私のものにするためには、どうしたらいいか。ずっと前から、考えてたの。悪い虫からキーツを守るためには、どうすればいい? 何もかもから引き剥がし、繋いで、閉じ込めておけばいいのかな? でも、キーツには友達もたくさんいるから、私以外の人間のことも考えてしまうでしょ? それじゃ違う。それじゃあ、私のものになったって言わない」 「まさか――」 「だから、決めたの……この私のユートピアで、永遠に他なんて見えないようにしようって。だから、殺しちゃった」  まるで、無垢なこどものように、にこりと。  亡霊は、そう平然と言ってのけた。 「どうして……」 「どうして? 何もかも、お前のせいだろ」 「え?」  わたしのせい……どうして……。  そうわたしが戸惑っていると、亡霊はおもむろに被っていたフードをぱさりと脱いで、その相貌をわたしたちの眼前に晒した。  その顔は―― 「お前たち……まさか――」  声だけじゃない――現れた顔は、わたしと瓜二つだった。 「同じ、顔……?」 「当たり前でしょ。だって私たち、双子なんだから。ね、」  にこり、笑って。  亡霊は、驚くわたしに向かって、そう言った。 ◆◆◆  ――あれ、どうしたの? 珍しいね。帰って来てたんだ。え? キーツが呼んでる? わかった、教えてくれてありがとう。そういえば、どこか旅行にでも行くの? キャリーバッグなんて持って。わたしたち? そうだよ。今から旅行に行くの。誰から聞いたの? 恥ずかしいから、茶化さないでよ。じゃあ、キーツのとこに行ってくるね。またね、。 「うっ……」  頭が割れるように痛む。  亡霊の、猟奇殺人犯の顔を見て。  わたしと同じ相貌の、双子だと名乗る女の言葉に、頭痛とともに蘇る記憶があった。  目の前の黒マントを睨む。 「セナ……あなたってひとは――!」  隣に立つ男の、驚く気配がした。  しかし、構ってなどいられない。  そう――わたしは、セナじゃない。  あの二人から呼ばれた時にしっくりこなかったのは、そのせいだ。  記憶を失っているのも、確かだった。  だけど、エルサさんのことも、トーリくんのことも。  そして、この館のことを覚えていなかったのは、当たり前だ。  わたしは、記憶を失う以前だってあの二人には会っていないし、この館になんて来たことはなかったのだから。 「記憶が戻ったの? ショック療法ってやつかなあ?」  くすりと嘲りを含んだ笑みを浮かべて、セナ――双子の妹は、わたしを見た。
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