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 文芸部の部室でひとり本を読みながら昼食を取ったぼくは、デザートにとチョコレートに手を伸ばした。今朝、クラスメイトからもらったチョコレートだった。  今日は2月14日で、バレンタインデーで、チョコレートが飛び交う日だった。我が校でも朝から生徒のあいだでチョコレートの受け渡しが行われていた。義理チョコから本命チョコまで、さまざまな意味を持ったチョコレートが公然とあるいは秘密裏に右に左に流れていった。そんなイベントとは無縁だと思っていたぼくでさえ多少のチョコレートにありついていた。大半が「義理」を強調した市販のチョコレートだったがそれでも案外うれしかった。  そのうちのひとつを食べようとした。食後のデザートに。  教室の扉が開いたのは、そのときだった。
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