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「やあ、探偵」そう言いながら入ってきたのは同じクラスの男子、オリハルだった。「なんだ。今日はいっぱい人がいるね」
男子。流れが変わった、とぼくは思った。
オリハルは米が盛られた茶碗をその手に持っていた。
「オリハルもチョコレートを作ろうとして米を炊いたのか?」とぼくは訊ねた。
「はあ?」とオリハルは怪訝な表情をした。「いやまあ、よくわからない話しなことは変わりないんだが、この米ならさっきエリグチにもらったんだよ。これを持ってここに行けば、おいしい定食が食べられるってね。相変わらずよくわからない女の子だよ。まあ、米をもらえたのはうれしいんだけどさ。じつは今日、弁当を忘れたんだ」
それを聞いたアカヌマさん、イトモトさん、ウミヤさんの3人が一斉に言った。「よかったらこれを食べて!」「よかったらこれを食べてください!」「よかったらこれを食べてくれ!」
肉じゃが、豆腐のみそ汁、ニシンの塩焼き。3人はそれぞれ自分の作ってきたものをオリハルに差し出した。
「くれるのか、ほんとうに? 自分たちのお昼ご飯でしょう?」とオリハルが訊ねた。
「いいの。もうお腹いっぱいだから」「いいんですう。もうお腹いっぱいなので」「いいんだ。もうお腹いっぱいだから」また3人は一斉に言った。
「ありがとう、3人とも。恩に着るよ。ここで食べてもいいかな?」
ぼくはうなずいた。「別に構わないよ」
オリハルは忘れた弁当の代わりに彼女たちにもらった食事を食べた。
肉じゃが、豆腐のみそ汁、ニシンの塩焼き。
これは立派な定食だ、とぼくは思った。
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