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悠は黒沢達が待機していた個室の前に来た。
柚木の言葉が胸に刺さっていた。
(愛さない訳がないか…)
頭をふり深呼吸するとドアを開け中に入る。
最初に話しかけてきたのは黒沢だった。
「お疲れ様でした。
無事に終わりましたか?」
「あぁ…
今はディナーの説明されてるはず…」
「そうですか…
ではご自宅に戻られますか?」
「少しだけ待って…」
悠は椅子に座っている蘭丸と晃子朗を見る。
「先生の処分は保留にした…
夏休みまでに確定する…」
「じゃあゆんゆんがSSクラスに来るかも知れないんだね!
楽しみ~」
「蘭丸…
そう簡単にはいかない条件を出したはず…
安易に喜んではいけません…」
「え~」
頬を膨らませた蘭丸が悠に近付く。
「ゆんゆんは私たちが嫌い?」
「ストーカーを好きになるわけない…」
「あ、あれは…」
「その件に関しては申し訳ありません…
蘭丸と調子に乗りすぎました…」
「はっきり言って迷惑です…」
悠は黒沢を連れ部屋を出ようとしたが蘭丸と晃子朗が駆け寄る。
「あぁ、先生達はタクシーを手配してるので大丈夫…」
「ゆんゆん…」
「悠さん…」
「これ以上あなた方を嫌いにならせないでください…」
それだけ言うと悠は黒沢と個室を出ていった。
残された二人は椅子に座り直す。
そしてなんとなく外を見た。
「蘭丸…
少々やり過ぎましたね…」
「うん…
ゆんゆんならあの時と同じように仕方ないですね?って笑ってくれると思ってた…」
「あの時?
あぁ、らんらんって呼んで事件?」
「本当に可愛かったんだよ…
らんらんさんってハニカミながら言うゆんゆんが…」
「何があったんですかね?」
「わからない…」
深いため息を付き蘭丸がスマホを眺めた。
晃子朗もスマホを取り出した時蘭丸が叫ぶ。
「どうしたんですか?」
「来週パーティーがある…
忘れてた…」
「大丈夫ですよ?
僕も出るように言われてますから…」
「それなら良かった…」
「慣れた人以外は口下手なのは昔からですね?」
「そうだったね~」
初等部から一緒にいた二人はウェイターが呼びに来るまで懐かしい話をした。
憂鬱になるパーティーを吹き飛ばすように。
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