遭遇は突然

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講義が終わるとすぐにクラスの教室に向かう。 気持ちが先走り早歩きで辿り着くといつもの教室とは違っていた。 (何これ。) 廊下から見える部分は真っ黒な遮光カーテンに完全に防がれていて、外からは一切見えない。 ドアに向かうと簡素な便箋が一枚貼り付けてあり、 『Welcome』 と書かれていた。 私は恐る恐る扉に手をかけゆっくりと開く。 開けると同時に左右から盛大なクラッカーの音が聞こえる。 「「「ハッピーバースデー雫!」」」 百合と皐月と菫の声が被る。 呆気に取られていると三人はクラッカーを置いて大きめの紙袋を机から取ってきた。 「はい!プレゼント!」 「あ、これは誕生日のプレゼントね!」 三人はそういうと私の近くの机に置いた。 しかし友人三人がここにいるということは手紙を置いてたのはやっぱり百合達だったのか。 「手紙、やっぱりみんなだったんだ。」 「私達だけじゃないけどね。」 その言葉に驚いて目を泳がせる。 すると皐月が後ろにいる一人の肩を叩いた。 「えっと…。」 少し照れた様子で出てきたのは食堂で見た少し可愛い目の男の子だった。 「確か食堂の…。」 「あ、宇都宮拓巳って言います…。」 それで、と口ごもりながら私の前までやってきた。 「誕生日おめでとうございます!」 後ろ手に隠していたのか花束を眼の前に差し出した。 私の好きな淡いピンク色の可愛らしい小さめの花が束になっている。 それらの色とかすみ草が来る春らしい雰囲気を醸し出している。 私は今も驚きを隠せないでいるが可愛い花に誘われるように手を伸ばした。 「ありがとう。」 「いや、その…。」 「このサプライズも手紙もこいつの発案なんだよー。」 菫が宇都宮くんの肩を叩きながら言った。 私はてっきり三人が考えたんだと思っていた、彼のことは講義で何度か出会ってるかなというおぼろげな記憶しかない。 「そうなの…?」 「い、一応…!」 「俺も巻き込まれたけどな。」 言いながらドアから入ってきたのは食堂で見たイケメンのほうだ。
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