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私は皆に笑顔で向き直る。
「みんな、ありがとう。」
きっと一生、いや死んでも忘れられない誕生日になった。
私の言葉を聞くと言い合っていた男子二人もこちらを向いて嬉しそうに笑った。
そして百合が私の腕を引っ張る。
「ケーキも用意したんだよ!」
みんなの影に隠れていたが教室の中央に昔はよく食べていた真っ白なケーキがロウソクを立てて待っていた。
一人が火をつけると残りが早く早くと私に火を消すように促してくる。
私は大きく息を吸い込んで久しぶりにロウソクの火を消した。
その瞬間全員が拍手を贈ってくれて。
「おめでとう!」
「お誕生日おめでとう!」
ともう一度祝ってくれた。
私は目頭が熱くなっていくのを感じながらも皆が切ってくれて紙皿に入れてくれたケーキに口をつけた。
各々近くに椅子を持ってきて今までの手紙の事を話している。
「いやー雫が清水寺わからなかったのは予想外だったわー。」
「ちがっあれは久しぶりだったから!」
皐月にからかわれて少し恥ずかしくなる。
抗議していると菫が笑いながら会話に入ってきた。
「どうしようかってなって宇都宮くん達がアドリブしたんだよねー。」
「あれな!俺が馬鹿みたいになったし!」
「本当に成績は悪いけどな。」
「うるせー!」
男子二人がじゃれあうように言い合う。
いつもこんな感じなんだろう、けどきっと私もこれからこの二人と同じようにふざけ合えるようになるだろう。
微笑ましく笑っていると百合が耳打ちしてきた。
「これからはみんなで遊ぼうね。」
手紙じゃなくて、とにこやかに言う彼女に私も大きく頷く。
夕闇が辺りを包んできて外は寒さを増しているが、教室は明るく私達の心は暖かくなっていった一日だった。
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