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昼休みになっても一つだけ解けずに困っていた。
(お寺の名前とかわかんないなぁ…。)
残念ながら歴史は苦手だった。
悩みながらお昼ご飯を食べていると声がかかった。
「雫どうしたの?」
「めっちゃ眉間にシワ寄ってるよ。」
「一緒食べていい?」
来たのは百合とあと二人、仲良しの皐月と菫だった。
三人とも学食で買ったみたいでトレイを持っていた。
「良いよー、一緒食べよー。」
クロスワードを鞄の中に隠して席を開ける。
下手に手紙のことを言うと心配させてしまうかもしれないというのもあるが、なんだかこれは秘密にしておきたい楽しみでもある。
それにしても一つ解けないなぁと皆と話しながらも答えが気になって仕方がない。
考えながらも昼食を取っていると隣の席から話し声が聞こえてきた。
「だからぜってー無理だってー!」
大きな声に驚いて全員がそちらに向く。
皐月が小さな声で、やーねー男子って声大きくて、とか言っている。
その間も隣の会話が流れてくる。
「うまくいかなかったらどうすんだよー!」
「知らねぇよ、やってみりゃいいだろ。」
はっきりとした内容はわからないが、少し可愛い目の男の子が頭を抱えていてもう一人のイケメン男子が少し呆れたように答えている。
そして頭を抱えている男の子のほうが大きく溜息をついた。
「こーゆーの何だって言うんだっけ?当たって飛び降りろ?」
「…清水の舞台から飛び降りる」
「そー!それ!!」
「てか何かと混じってるだろ…」
そんな会話をしつつ二人の男子は昼食が終わったのかトレイを返しに行ってしまった。
(清水…あ!清水寺か!)
思いついたのはクロスワードの答え。
有名な寺だというのにどうして思いつかなかったんだろう。
経緯はどうあれわかったことに嬉しくなった。
「雫、いきなりニコニコしてどしたの?」
「ふふ、なんでもないよー」
言うと三人は少しだけ不思議そうな顔をしていたけれど、これで次の手紙の場所がわかると思うと楽しくなってきてしまった。
気持ちが変わるとご飯も美味しくておしゃべりしながら昼食を終えた。
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