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「悔しいな」
「なにが?」
「俺が知らない杏を見れる人がいるなんてさ。俺だって一日中ガラスに張り付いて杏を見てたいのに」
ふてくされたように言うから、少し可愛いと思ってしまった。
「私だって柊が働いてるとこ見てみたいって思ってるんだよ」
柊の何気ない日常を覗いてみたい。
IT関連企業で働く柊の仕事内容は、私が見たり聞いたりしてもチンプンカンプンなんだろうけど。
いつもスーツをカッコよく着こなしている柊がバリバリ仕事をしているところを想像しただけで、胸がキュンとしてしまう。
「そうなの?俺は別に普通だと思うよ」
「普通でもいいっ!私は柊の普通がどんなのか知りたいの!」
つい熱が入って力説する私に、周りのお客様をはじめ通行人からも視線が集まった。
ハッとして俯いても後の祭りで、今の私は完全に注目の的。
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