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ジリリリリ…
ピピピピピ…
リーン、リーン…
枕元が騒がしくなったら起床の合図。
私の朝はとにかく早い。
仕事の日は4時に起きて5時前には出勤している。
「杏、朝だよ。起きて」
「んー…」
そのくせ私は朝が超弱い。
中々起きることができないから目覚まし時計は常に10個以上完備、スマホのアラームだって5分おきに鳴る設定にしているのに今日もベッドから起き上がれない。
「杏、」
「お願いあと5分だけ…」
「ん、分かった」
そんな風に大きな手でふわっと頭を撫でられたら、すぐにでも夢の世界に逆戻りできそうだ。
暦の上ではもう春だけど、三月の朝方はまだまだ冷える。眠いのはもちろんのこと、寒くて布団から出たくない。
「杏」
「もー…まだ1分も経ってないじゃん」
「その5分もったいないからキスしてよっか」
「…!?」
ソッと耳元に落とされたのは、爽やかな朝にお似合いの程よい低音ボイス。
私の返事を聞く前に触れた唇は甘ったるくて毎度のことながら溶けそうになる。
溺れそうな口づけが降り注ぐ中、ようやく開いた目が彼を捉えた。
ああ…朝からパーフェクトなイケメンぶり。
「目、覚めたみたいだね」
「うん、おはよう…」
「おはよう。今日も大好きだよ、杏」
これが私、立花 杏と、私の彼氏、結城 柊の一日の始まり。
甘すぎる日常の幕開けなのである。
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