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そういう理由で今は父と私の二人三脚で頑張っているわけだけど、母の家出事件により意気消沈した父は業務全般を私に任せてくれるようになった。
単に若者の知恵を貸してほしいというのも根底にあったのだと思う。
まずは私のアドバイスにより店の改造からスタートした。ここは閑静な場所だが一本道を抜ければオシャレな店が並んでいる激戦区。地道にお客様を増やすには、店の第一印象が何よりも大切なのだ。
黒ずみが目立っていた建物は木のぬくもりが溢れる外観になり、今では老若男女みんなに愛されて誰でも気軽に立ち寄ってくれる店に変身した。
外には椅子とテーブルも設置してパンを食べられるスペースも確保。それまで扱っていなかったコーヒーマシンも導入し、ドリンクメニューも充実しているカフェのような要素を持つパン屋を目指した。
時代に流されるのが大嫌いな父は定番のパンしか作って来なかったけれど、改装後の盛況ぶりには気を良くしたのだろう。最近ではオシャレなパンを研究し、新作を続々と生み出している。おかげで店も軌道に乗り、評判も売り上げも上々。
これで私の人生も薔薇色…______
だと思っていたけれど、怒涛の毎日に追われて気付けばマトモに恋愛しないまま二十代も半ばに差し掛かっていた。
こんな生活していたら恋愛する暇もなく、そもそも出逢いすらなくて完全に干からびている状態。
まぁ学生時代の友人ABの例もあるし、上手くいかなくなった両親を目の前で見てきたこともあって自分は恋とか愛とか無縁な人生を送るんだろうなって漠然と思ってた。
これがほんの一年前までの私の話。
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