キミと私

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「パンが好きというよりは、杏が好きなんだよね」 「え?」 「もし杏が牛丼屋で働いてたら毎日牛丼だし、漬物屋で働いてたら毎日漬物ってことだよ」 「毎日漬物って…」 そんな馬鹿な、と思いつつ顔には熱が集まった。 赤くなった頬に触れながら「可愛い」と言って笑う柊は今日も甘い。 これまで恋愛経験がなかった私に奇跡的にできた彼氏がこんなにもハイスペックだなんて未だに信じられない。 そう、柊はハイスペックなのだ。 女性が恋人や結婚相手を探す際の判断基準とも言われる所謂“三高”は余裕でクリアしているし、顔面偏差値なんて高すぎて私と釣り合ってないんじゃないかと何度思ったことか。 だから一年前、仕事中に突然告白された時は驚きを通り越して夢かもしれないと思った。 すぐにほっぺをつねって確認したところ、ちゃんと痛くて夢じゃないことは分かったのだけど。 改装前のお化けベーカリー時代から毎朝店に来てくれていた常連さん。それも、目を見張るくらいのイケメンが何の取り柄もない私のことを好きだなんて詐欺かドッキリのどちらかに決まってると疑ったほどだ。
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