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箱の中には、紙が二枚入っていた。取り出して裏返すと、最近できた遊園地のチケットだと分かった。
「何これ」
「遊園地のチケット」
それは俺も見て分かった。なんでミヅキがチケットを持ってるんだ。それも二枚。誰か誘っていけばいいのに。
「この前母さんとここで買い物来てさ、くじの半券何枚かもらったんだよ。で、早速やったら一等のそれが当たったんだよ」
「すげぇくじ運良いな」
「俺も当たったときびっくりしたよ。せいぜいティッシュか五等のラップかと思ったから」
母さんに渡したけど、誰か誘って行けばって返されたんだ、とミヅキは話した。
「そしたらさ、母さんがチヒロ誘ったらって言うんだよ。近所の幼馴染だから何かあると思ってたんだろうけど、そんなわけないしチヒロはリツと付き合ってるって言ったら驚いてたぜ」
「驚くことか……? ミヅキもこれ自分で使えばよかったんじゃないのか?」
ミヅキの母さんが驚いている様子を思い浮かべて首をかしげ、俺はミヅキに向けてチケットを出した。
「俺友達いるって言ったけど女子とは授業のグループ活動みたいなものでしか話してないんだよ。それに、女子っていつも何人かで固まってるから声かけにくいんだよ」
それで彼女のいる俺に渡したわけか。中学校までとは違って女子との接し方に距離ができた気がするのか、俺も高校では男子としか話していないなと思った。
「お見舞い行くんなら、それ持ってけば? 試験も終わって春休みくらいに遊びに行けるじゃん」
「あぁ、持っていくよ。ありがとう」
俺が礼を言うと、ミヅキは椅子の背もたれにもたれかかり、腕を組んで誇らしげな顔をした。
「いやぁお礼を言うならなんか欲しいなぁ」
「なに、チョコか?」
ついに足を組みだした。一体何を期待しているんだと思うほどミヅキの表情筋はゆるんでいる。
「ゴヂバのチョコレート、売り場にあるのかな」
高校生に求める対価として大きすぎる。
「ばかやろう」
もう少し手頃なチョコにしてくれと、チケットを入れていた空き箱でミヅキの頭を叩いた。
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