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「えっと、だれかな?」
「ふふふ、それはね、後で教えてあげる。そんなことより君に紹介したい人がいるの。転校生なんだけど」
「へぇ、誰?」
面倒だが目の前の女子がかわいいのでつきあうことにした。
「ジャン!」
彼女の掛け声に合わせて横の路地から男子生徒が出てくる。見ない顔だ。
「・・・知らないな」
「ヒント、前に会ったことがあります」
頭の中に声が響いた。
「えっ、まさか、お前!?」
「そうだ。今回は事故のおかげで保険金と長期滞在許可が下りたから、帰らなくていいことになってね。ついでに学生をすることにした。よろしく頼むよ」
「ちなみに私が、君の下駄箱に彼を入れた犯人です。ごめんなさい!!」
女の子がぺこりと頭を下げた。
開いた口が塞がらない。そんな俺を見ながらあいつはやはりあの落ち着き払った声で言った。
「君にはいろいろと恩があるから、何でも力になろう」
「お、おう」
「それと、昨日のチョコのお返しもね。いいものを用意しよう」
「はっ?」
「地球の風習ではバレンタインに受けた菓子の返礼はホワイトデーにすると聞いたんだが」
「・・・いらねーよ」
全然、甘くないどころか頭痛の種を抱えてしまった。
楽しそうな二人の異星人を眺めながら、口の中の苦さをただ噛みしめることしかできなかった。
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