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やけにのんびりした口調でそいつは語りだした。
宇宙人曰く、地球には観光の目的で来る予定だったのだが、大気圏辺りで原因不明の事故に合い体がバラバラになってしまったとのことだ。
「いや、なんであんたの体が俺の下駄箱にはいってんの?」
「たぶん同士の仕業だ。実は地球に住んでる仲間が結構いてね、体は彼らが全て集めてくれている。本当は私の体を所定の場所にもってきてもらう手筈になっていたんだが、どうやら敵性種がいたみたいでね。そいつは捕食型で攻撃性の強い個体らしいから、私の生存を優先して君に預けたのだろう。緊急避難のようなものだ」
「いや、それのどこが避難なんだよ?大体、そんな凶暴なやつに狙われてるなら地球人に預けたらまずいでしょ。俺も危ないし、やっぱ吐いていい?」
「やめてくれ。捕食型は地球人は食べないし、あれはにおいで地球人と異星人を判別するから、我々より同士達を狙うだろう。普段ならまだしも、この状態ならにおいなんてほぼしないはずだ。君は大丈夫、私が保障しよう」
(信じていいのか・・・しかもこの話の流れだと・・・)
ゴミ箱の前で腕を組みながら、目の前のチョコもどきに尋ねる。
「もしかして、お前の言ってた『頼みたいこと』ってお前の体を回収するはずだった奴の代わりを俺にやってほしいとかそういうことだったりする?」
「おっ、察しがいいね。色々不安はあるだろうが、頼まれてはくれないだろうか?私はこんな姿で能力はほとんど使えないが、同士と通信くらいはできる。出来る限り人員を寄越してもらうつもりだ」
「お前の仲間に戦えるやつっていないの?そいつに頼んだら?」
ダメもとで提案してみた。
「我々が気を付けなければいけないのは捕食型だけではない。友好的でない種族は山のようにいて、強いやつはそいつらの警戒もしなくてはいけないんだ。大体、彼らは匂いも強いから運搬には向かない・・・すまないな」
「そうか・・・仕方ない協力しよう。ただし、ちゃんと守ってくれよ」
「ああ、約束する」
一番非力なくせに声だけは頼りがいがある。
ため息を一息つくと、どっと疲れが出た。異常な対話手段を使ったせいだろうか。
ちょうど母さんの呼ぶ声が聞こえた。夕飯の時間だ。
立ち上がって、居間に向かう。食事をして少しでも憂鬱な気分を吹き飛ばそうと思った。
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