私達は仕事ができる可能性がある

最近、ホームレスの集まるところに風変わりな姿の人物が現われるという。
それが、私達のいるところにも姿を見せた。
間違いない。きっとそうだ。
私もそのホームレスの集まりの１人ではある。
私はというと、大学に入学するところまでは行けた。専門学校にも行っていた。
それが今ではこの有様である。
足りないものは。この年になってようやくわかってきた。行動力である。
世の中、あちこちの職場で人手不足が言われている。
だけど、人手ならここにものすごくいる。
誰でも簡単にすぐできるような仕事でさえ、なのだろうか。
自分はというと、パソコンぐらいはできる。
昔は色んなことによく使っていた。
だが、機種が古くなり、収入のほうも行き詰まっていき、新しいのを購入する費用すらなくなっていった。ましてやスマートフォンなどは。
こういった状態に対し、政府は、政策を立ててはいるだろうけども、惜しむらくは、世の中全体を良くすることしかできないのであろう。
こうしたときに、残された可能性は、ボランティア、なのだろうか。
この大都会のあちこちに、可能性ポストというのが作られていった。
赤ちゃんポストというのは聞いたことがあるが、可能性ポストという名前を考えた人は、よほどセンスがないのだろうかと思った。
ここに自分をアピールする内容を書いた紙を入れると、救世主が現われるという。
私も、紙と机と筆記具を何とかがんばって用意し、可能性ポストがあるところまで歩いていって投函した。これくらいの行動力はある。
それからしばらくして、今現在。その人物が現われ、こちらに向かってきている。
そして、私のところに近付いてきて、ささやいた。
「・・・さんですね。参りましょう」
こうして、私は付いていった。これはすなわち・・・。
やった～。私にも可能性が残っていたんだ。
私はこれから人生の再出発に向かうところであるが・・・。
それでも、願わくば、ここにいる全ての人達に、その可能性が見い出され、救われんことを。