私の嫌いな女

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 だってそうだろう。彼らは若い。いつだってキラキラしていて、光る汗はダイヤモンドのようだし、弾ける笑顔はフレッシュな果実のように爽やかだ。そんな彼らを応援するのに年齢なんて関係ないとは思うけれど、コンサート会場に行けば若い女の子で溢れ、どんなに気は若いつもりでいても所詮はただの強がりに過ぎない。  どんなに着飾っても、どんなに上手に化粧をしても、若さには勝てないのだ。そして、ついていけないと、勝てないと思った瞬間に、そこは足を踏み入れてはいけない場所に成り代わる。無理してついてこなくていいと言われているような疎外感を感じるのだ。  だから私はコンサートに行くのをやめ、おばさんらしく茶の間で応援することに決めた。  若い子の中におばさんが混じるというのは、例えるなら淡くてかわいいピンク色の中に、すすけたグレーが、あるいは埃っぽい茶色が混ざるようなもので、そんな景色は美しくない。それを汚しているのが自分だと思いたくはない。  私はそう思ったのだ。  ところがだ。信子ときたらもう50近くになったというのに、まだ嬉々としてコンサートに行っているのだ。息子ほど年の離れた男の子にうつつを抜かし、自分が汚色だとも気付かずに、おばさん特有の面の厚さで堂々としている。  私がそれに気付いたのは、無料投稿アプリの中だった。彼らの情報を検索していると『のん』という名前の投稿があり、そのページに飛んでみると『アラフィフでーす!T君とA君の担当!娘達と追っかけやってまーす!』というプロフィールメッセージがあり、絵文字や顔文字の使い方や投稿内容から、それが信子だと気付くのにさして時間はかからなかった。
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