私の嫌いな女

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 厚顔無恥とはまさにこの事である。なにが『のん』だ。おまえの名前は信子だろうが。余りの事にゾッとして、私はすぐにそのページを閉じてしまった。  その日は衝撃と嫌悪感でページをすぐに閉じてしまったが、翌日から私はのんを監視するようになった。  読めば読むほど増す嫌悪感。ぐるぐるとどす黒い感情が渦巻いて、なんとかして信子を辱しめてやりたいと思うようになった。  そこで私はアカウントを作成し、20代のアイドルファンの振りをして信子にメッセージを送った。 『50代なのにパワフルですごいですね!私だったら30過ぎたらファン卒業しちゃうかも』  遠回しな嫌味のつもりだった。おばさんがいつまでアイドル追っかけてんだよ。そういうメッセージだ。  ところが信子は『ありがとうございます!年齢なんて関係ないですよ。好きな気持ちはみんな一緒ですから!』と返してきた。少しも効いていないどころか信子はその後でこんな投稿をしてきた。 『アイドルの追っかけなんて趣味みたいなものなんだから、例えば釣りとか読書とかと同じ。そこに年齢制限なんてないよね』  釣りや読書といった年齢問わず男女問わず楽しめる趣味と、アイドルの追っかけを同列に並べてくる時点で頭がおかしい。自身の正当化、同調圧力、そんなものが画面からひしひしと伝わってきて、そこで初めて私はこの女を嫌いだと思った。  どの投稿もそうだ。  年齢を気にせずアイドルが好きだと大声で言える私、アイドルの追っかけを趣味として楽しめる私、若い子に負けず一生懸命応援している私、私、私私私私私、わ・た・し。  それは私の全てを否定する言葉だった。
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