17人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、お義母さん。いらっしゃい」
「お義母さんはやめてよ」
あれから1年が経ち、私は20も年下の男と結婚をした。名前は賢二。そして賢二の母親は私よりみっつ年上の、信子だ。
そう。私は、信子の息子と結婚したのだ。賢二は私が看護師として勤めている病院に出入りしている薬品会社の社員で、信子に息子がいることは知っていたけど、話す内容はいつもアイドルのことばかりだったので、まさか賢二の母親が信子だとは思いもよらなかった。
結婚の挨拶に行ったのは、つい3ヶ月前で、その時には有り難いことに私のお腹には新しい命が宿っていた。40も半ばを過ぎて、子供を授かるなんて夢にも思っていなかったし、そのことが年の差婚への後押しとなった。
だが、当然、いい顔はされなかった。妊娠していると言っても高齢出産だ。色んなリスクがつきまとう。渋る両親に賢二が言い放った言葉は、爽快だった。
『母さん、いつも言ってるじゃない。なにをするにも年齢なんか関係ないって。いつまでもアイドル追いかけ回してる母さんが、年齢を理由に僕たちの結婚に反対するなんておかしいじゃないか』
私は笑いを抑えるのに必死だった。うつむき肩を震わせる私を賢二は泣いていると思ったのか、私の背中を優しく撫で『繊細で聡明な人なんだよ。母さんと違って謙虚で奥ゆかしいし』とまで言ってくれた。
私は信子に勝ったのだ。息子ほど年の離れたアイドルを追いかけ回し、ネットで醜い醜態を晒していた信子とは違い、私は息子ほど年の離れた男と結婚することが出来た。
最初のコメントを投稿しよう!