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俺だけを見ろよ
翌日、目が覚めたヒカルが、まず初めに思ったこと。
ーーー昨日のことは、夢だったのだろうか?
あんなに優しく穏やかだった小林の変貌。未だに信じられない姿だ。
包帯が巻かれている腕が、昨夜の出来事が現実だったと示していた。
ーーー本当にあった出来事なんだわ。
大きく息を吐いてからヒカルは、そっと自分の唇に触れてみる。
昨日の夜、大乗と確かに唇を合わせた。思いがけず息苦しくなるくらい、そして、離れたくなくなるくらいのキスになった。
思い出すだけで、体が火照り出す程だ。
熱くなった?に冷えた手を当てる。
着替えて下へ降りると、朝食の準備がしてあった。
すでに光太郎が椅子に座ってヒカルを待っていたように顔をあげた。
「おはようございます。お父様?……待っててくださったの? 」
「ああ、今日は午後から出社すればいいからな」
光太郎と一緒に御飯を食べること事態が非常に珍しいことだった。
幼いころからヒカルは、中本やお手伝いさんが用意してくれた朝食を1人でとり学校へ出かけた。
仕事で帰りの遅い光太郎とヒカルは、生活リズムが違うため全く食事の時間が被らなかった。だからヒカルは夕食も1人で食べた。
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