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なんだ? 魚が生きてるからどうしたというんだ。つか料理になった時点で生きてるも何もないだろう。この女が魚嫌いだからなんだ。見るのもダメなのか? といっても、客が食べたいと注文をしているのだから承れよ。
「すまなかったよ、好……これからは、お魚さんは頼まないことにする」
「なんで!? 食べたいなら頼めよ!」
茂は泣き崩れる好の背に手を添えて、何故か涙を流して許しを得ている。それに応えるように好は「ご主人様……」と、甘い声で頷いて、こちらも号泣していた。
(いや、何見せられてんの……? ていうか、何なのこれ)
頓珍漢なコントが終わったところで、茂と好はケロッと元に戻り、茂はお魚パイの代わりにカスタードプディングを頼んだ。さっきのパフォーマンスについていけなくて茫然としている俺に、茂が「お前は何頼む?」と問う。
俺はここで何かを食う気も、この店に金を払う気も、さらっさら無かった。
「いらない」
「そう言うなって」
「いらないったら、いらない」
「コーヒーくらいなら奢ってやるよ」
「……じゃあ、それでいい」
「がってん承知だにゃ~♪ すぐにお持ち致します」
ビシッと敬礼して、好は厨房へ向かった。
去るのを見送ると、茂がにこっと気色悪い笑顔で俺にこう言った。「可愛いだろ~? うちのメイド~?」
「どこが!? つうかなんで俺をここに連れて来た!?」
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