1 あなたと私は持ちつ持たれつで

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 朝勤の店長と赤池さんに挨拶を済ませてロッカーに制服をしまったのを確認し、斜め掛けのカバンを持ち、バックヤードを出てスタスタと出入り口に歩く。 「お先に失礼しまーす」 「お疲れさまです、フリーターさん」 「お疲れー、フリーターくん」  一度コンビニでアルバイトしたことある人なら分かると思うんだけど、コンビニの朝は店舗にもよるけど基本忙しい。出勤前のサラリーマンやOLが飲み物や軽食を買ったり、土木関係のあんちゃんが昼の弁当買ったり。近くに住んでる爺ちゃんが新聞買ったりと、とにかくレジにお客さんが並ぶ。  そして普段ならもう既にラッシュ帯になっているの時間にも関わらず何故か今日はお客さんの波が来ない。  だからか、いつもだったら朝勤の二人はレジをしながらの軽く「お疲れー」「気をつけてー」「また今夜も頑張ってー」みたいな魂の無い返事なのに今日は違った。  出入り口の扉に手を掛けてあと少し力を入れたら開くという状況でありながらもその手を止め、ゆっくりと二人の方を見る。  四十代既婚者で若干毛根の勢いが失われつつ店長も、近くの大学に通う一年生の赤池さんも何か含みのある笑顔だった。 「……あのですね店長。それに赤池さん。忘れた頃にするその流れやめましょうよ」 「え? フリーターだよね?」 「いや……確かに俺はフリーターですけど、フリーターじゃないんですよ」 「フリーターじゃないですか」 「いやフリーターなんですけど! 二人が呼んでるの完全に蔑称ですよね? 俺の忘れたい中学時代のあだ名の方あえて呼んでるんですよね?」  二人は顔を見合わせてあっはっは。といった具合に笑い合う。なんだこれ、コントかこれ。 「ごめんごめん、そのリアクションが好きでねぇ。名脇役としてデビュー出来るよ」 「私的には二時間ドラマの死体役とかいいと思います」  褒めてるのか貶してるか分からないんだけど、たぶん貶してるよなこれ。褒めてるような感じじゃないもん。 「デビュー出来てるならとっくにフリーター辞めて芸能プロダクションにでも所属してますよ。それじゃあ失礼します」
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