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ぶっきらぼうにそう言いながら出入り口に手を掛け扉を開けようとすると、店長がわざとらしく「ごめんごめん」と謝ってくる。
謝って済むなら警察はいらないんですよ店長。俺は大きな精神ダメージを食らいました、さようなら店長。次に会うときは法廷です。俺が人間不信を極めた時です。
「ほら廃棄のお弁当持って帰ってもいいからさ、機嫌なおしてよ。幾つ欲しいんだい? 三つ? 三つかな、このいやしんぼうめ」
「ナチュラルに悪口言われた気がするんですけど……もらえるなら欲しいです店長。」
「よぉし、本部には内緒だぞ」
「店長のそんなところに憧れてます俺」
「よせやい」
店長はそう言ってそそくさとバックルームに戻り、廃棄の弁当が二つ入ったビニール袋を手渡してくる。わざわざご丁寧に箸も三膳入れてくれた。
え、人間不信? なるわけないじゃん笑顔の絶えない職場だよここ。誰しもが笑顔で仕事ができるんだぞ。
「店長のお陰で一人のフリーターの命が救われました……ありがたや」
「にしても、弁当三つって意外とよく食べるねぇ」
「え? あー……まぁ、齢二十二にしてまだまだ育ち盛りなもんで」
両手を合わせ精一杯の感謝を示し、何度もお礼を言ってからそのままコンビニを後にする。
外に出ると、四月だというのに生暖かい風が頬を撫でる。チラホラと歩いているサラリーマンたちもこの地味ーな暑さに思わず上着を脱ぎながら駅に向かっていた。
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