3人が本棚に入れています
本棚に追加
なんだ。たまたまコンビニに寄らないだけで普通に通勤中のサラリーマンとかOLがいるんだ。まぁ当たり前だよね。日本人働き者だからね。
俺は軽く安堵に近いため息を吐いてから、駅とは反対側にある自宅に向かって歩く。
鼻歌交じりで帰路についている僕は何人ものサラリーマンやOLとすれ違ってからようやく気づいた。どこか真新しいスーツを着た男性や、俺と同じくらいの年齢っぽい女性がいる。
……あー、そうかそうか。新社会人か。
四月だからそりゃあの中に新社会人もいるよね。四月に入って一週間かそこら経ったけど全然気がつかなかった。
スーツに着られているっていうのかな、どこかまだ着慣れていない中、これから出勤するために駅に向かっている人達とすれ違いながら俺は帰宅。
就活に失敗したのをヒシヒシと再認識しちゃうからなんか悲しくなってくるなぁ、とかなんとなく考えながら歩くスピードを上げた。
さておき。駅から徒歩数分の間に位置する築四十年超えの古い二階建てアパート。そこの階段を靴底の音を響かせながら上がる。
一番奥の角部屋。つまるところ僕の一国一城の主になれる世界の扉前に立ち、鍵を開けて部屋の中に入った。
「はいただいまー」
玄関の鍵を閉め、靴を脱いで端に寄せたのを確認した俺は冷蔵庫に貰った廃棄の弁当をしまってから部屋に向かう。
「おかえり、フリーター」
安物のジーンズと黒のロングTシャツに身を包んだ白髪の少女がこちらに視線を移すことなく反応した。
最初のコメントを投稿しよう!