優しい世界に優しいお方

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優しい世界に優しいお方

 警備兵さんはパチパチと拍手をしながらタンペルトさんをヨイショしていた。 「やーさっすがスライム族変身はお手の物ですね。そんなに皆上手なんですか?」  タンペルトさんは両方を左右に振って謙遜しているようだ。ってかスライムだったんだタンペルトさんは。だからミーシャ族にもなれたわけだ。  でもご厚意だからすぐに追い出されるよな。また別の保証人を探さないといけないのか。 『小谷田さんはまだこっちに来て少しなのに言葉がお上手ね。誰に教えてもらったの?』  ……警備兵さん今変な感じだったんだけど。なんか頭の中で女性の声が響いてるような感覚の。 「そういえば教えてなかったなスライム族は他の族と違ってちょっと特別なんだよ。声帯がないから変わりに脳内に直接話しかける事が出来るし、吸収が早いから大体国家の頭や大臣よりも上なんてひょいひょいいけちゃうエリートで数が少ない族なんだ。」  なんか僕の知ってる異世界とは違うけどつまりスライムは政治に関してめっちゃ優秀な族なんだ。大臣クラスだとまだまだ下っ端な方なんだ。十分大臣でもすごいと思うけど大臣止まりだと家族の批判とかがいっぱいありそうだな。小声で呟いていたのでとタンペルトさんの肩がピクリと動いていたことに気がつかないでいた。  その後は何故鬼の様な姿で登場したのかや今白装束なのか聞いてみた。すると 『本来の姿ではあの大きな扉を開ける事が出来ないためミーシャ族の姿をお借りしました。ですが小谷田さんが怖がるようでしたので親しみやすい地球人に似せて変身したのですがお気に召しませんでしたか?』  とのことだ。でも白装束はお葬式の時に着ることが多いことを言うと慌てて着物に柄や色を足し始めた。  金色の蝶が無数に服を舞い、紺色がジワジワと全身に広がってくる。ポケッと見ていると首を傾げてジッと見つめてきた。それに気がついて目線をいろいろな所に巡らせていると警備兵さんがとてもニヤニヤした顔で見てくる。 「いやー青春だな。まったく羨ましいぜ。」  警備兵さんをバシバシ叩くとタンペルトさんはクスクス笑ってくれた。
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