ぴよぴよぴよぴよ

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ぴよぴよぴよぴよ

 視線がゆっくりとあがる。ヒタヒタと近づいてくる足音。  目を凝らしていると下半身がない囚人服を着た物が階段でビチビチうごめいている。顔は真っ黒に塗りつぶされていてわからないが妙に長い腕と胴体なのははっきりと感じた。  少し奥には上半身がない黒色のズボンを履いた物がダムダムと床を踏みつけている。  見に覚えのない恐怖が体中を駆け回ると同時に彼らは一斉にこちらを向いて徐々に徐々に距離を詰めてくる。  そこで夢は終わってしまった。強烈な寒気で目が覚めると真っ白のシーツに真っ白な枕、眩しい朝日が視界に広がる。  ゆっくりと体を起こすと近くにいた警備兵さんと目線があった。 「はよう。具合は大丈夫か?」  優しく声をかけてくれるのはありがたいし、体調も万全そうだがここは一体どこだろう。今まで寝泊まりしていた施設ではなさそうだし……。 「警備兵さん僕途中で気絶してしまったので記憶がないのですが。あの後どうなったのですか?」  キョトンとした顔で見てくる警備兵さん。しばらくすると大笑いをし始めた。なんでも質問を質問で返すのはあまりこちらで無いことだという。一瞬どういうことか考え込んでしまったのだ。 「その様子だと大丈夫そうだな。お前が倒れた後俺らは本人のご厚意に甘えてディナーではなくタンペルトさんのご自宅に来た。トカゲにはちゃんと言ったから心配するな。そして翌日の朝が来て今にいたる。」  なるほど倒れた後そんなことがあったのか。……タンペルトさんご迷惑じゃなかったかな。でも招待してもらったし最低限のお返しはしないと気が済まない。  もんもんと考え込んでいる時小さなノックが扉の向こうから聞こえてきた。返信をして開けようと立ち上がると扉の下にある細い隙間からニュルンとした物が出てきた。薄い水色のような液体(?)が大量に溢れていてある程度出ると少しの間停止した。  ジッと見ているとニュルニュル形が変わっていく。あっという間に液体は白装束を着た大和撫子の女性が出来上がった。
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