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「最後の雪まつりだね」
沈黙を破ってアリスが言った。
「ねえ、あたしの事、好き?」
テルは一瞬で身体中が熱くなった。心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思うほどだ。
言いたいことはたくさんあった。
この町から出ていかないでほしい。どうにかして、ここで暮らすように努力してほしい。引っ越すにしても、なんで一年中雪が降らないとこなんかに行くんだ。せめて雪の日だけは、僕のことを思い出してくれたかもしれないのに。
けど何より、好きだということさえ伝えられない自分が嫌だった。
しばらく黙っていると、アリスは「わかった」と言って振り向いた。
「10年後にまた聞いてあげる」
照れくさそうに微笑んで、「さ、早くいこ!」と言った。
駆け出していくアリスを見ながら、22歳になったアリスを想像した。
その隣を歩くに相応しい男になることが、テルの目標になった。
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