崩れた瞬間

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「うぃーっす」 「おぉ……」  色気のない挨拶を済ませ、太一の部屋のベッドに凭れかかって体育座り。別に用なんてないけど、ちっちゃい頃から続いてるこの習慣を、いまだにやめられない。  太一はベッドに寝転がってゲームしてて、私の存在なんて気にしてない。でもそんな太一に気を留めることなく、私も勝手に少年漫画がずらりと並ぶ本棚を漁って漫画の続きを読んでる。  ゲームの音を響かせながら、太一が私に話しかける。 「そういや、リーダーの予習した?」 「するわけないじゃーん。明日、朝イチでよっこにノート写させてもらうつもり」 「マジか。俺、当たりそうなんだよなー」 「横澤先生、日付で当ててくるから絶対くるじゃーん!」 「なぁ、よっこにノート写させてもらったら、俺にノート貸して」 「100円ね」 「金取るんか!」 「じゃ、いちごオレ」 「高くなってんじゃんか!」  目線が合わないまま続く、他愛ない会話。  兄弟のようでいて、それとは確かに違う。  ーー幼馴染という関係。  それは、ずっと変わらないんだと思ってた。
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