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私のセリフと被る、聞き覚えのある優しい声。噂のメガネ、海斗が現れる。
「来たわねぇメガネ~、でもまだ30分前よ? 相変わらず真面目なんだからぁ~」
「メガネはやめてよ楓ちゃん……そりゃ感謝はしてるけどさ」
「はいストップ~、余計な事は言わな~い! そして、ここで私から悲しいお知らせがあります」
楓が唐突に話題を遮る。唐突なのはいつもだからいいんだけどね。
「なんと~! 楓さんは今から緊急の用事でここを離れなければならなくなったのです! ごめんねマリコ」
「メリコって……もう癖になってるのね。いいのよ楓、アンタがそういうならよっぽどの用事なんでしょ? 」
「人生に関わるレベルよ」
「なら、早く行かないと。でも何だか嬉しそうね」
「やっぱり、以心伝心なんだ~。また会いましょ」
「見ればわかるっての。それに毎日会ってるじゃないの」
「それもそうね~」
「ありがとう、楓ちゃん」
「え?なんて言ったの?」
「ん? なんでもないよ。なんでもない」
そうして、楓は笑いながら街中へと去っていった。誕生日に寝るまで楓と一緒に居なかったのは、人生で初めてかもしれない。もしかして誰かと予定があったのかな。
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