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「ハァ……」
これ、嫌がらせなわけ?
黒板消しを手に、大きな溜息が溢れる。
私の目の前に立ち塞がる黒板には、ご丁寧に左上ぎりぎりから右下ぎりぎりまでみっちり詰め込まれた字の羅列が迫っている。しかも字がめちゃめちゃ小さいし、筆圧が濃くて力を入れて消さないと、なかなか消えてくれないという代物だ。
溜息を何度溢したからって黒板が綺麗になるわけなくて、仕方なく黒板消しを手に挑むけど……150センチに満たない身長の私には悲しいかな、背伸びしたって一番上まで届くわけもなく。
椅子を持ってこればいい話なんだけど、短すぎるスカートが気になるし、少しずつ横に移動しながら黒板消してる間に絶対からかってくる男子とかいるし、やりたくない。
往生際が悪い私は柳を掴むカエルのごとくピョンピョンとジャンプしながらラスボスと格闘してみたけど、体力ゲージが奪われるだけだった。
背中からプッと吹き出す声が聞こえてきた。
うわっ、絶対『チビ』とか言われる。
戦闘態勢に入ろうとする間も無く、
『貸して……』
低い声が私の真後ろから響いてきて、ビクッとした。
すっぽりと影に包み込まれ、大きな手が黒板消しを持つ私の手に重なって、奪い取られた。
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