私の彼は危なっかしい。

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私の彼は危なっかしい。

私の彼は危なっかしい。 横断歩道を渡れば車に轢かれそうになる。 駅のホームを歩けば人とぶつかり落ちそうになる。 デートに行ってもイカついヤンキーに目をつけられおどおどしている。 普通に道を歩いていても植木鉢が落ちてくる始末だ。 一緒にいるとハラハラしすぎていくつ命があっても足りない。 比喩ではない。そのままの意味だ。 私には不思議な能力がある。 自分の命を削って人の命を伸ばすというものだ。 大抵の人はこの能力のことを信じてくれないし、彼が知ったら絶対に私を止めるだろう。 だから彼には内緒である。 人の命をペットボトルに入った水に例えよう。 ペットボトルのサイズは人によって違うが、生まれた時は水が満タンに入っている。 そしてペットボトルの底に空いた針で刺したぐらいの穴から水が一滴ずつ落ち続けている。 時間が経てば自然と水は少なくなる。 残っている水が寿命ってわけだ。 私にできることは自分に残された水を他の人のペットボトルに入れること。 つまり、自分の残りの時間を削ったら相手はその分だけ生きれるということだ。 だが自分のも相手のも残っている水の量はみることはできない。 だから相手と自分の寿命をぴったり半分にすることはできない。 私の彼はいつも危なっかしい。だから私の命がいくつ命があっても足りないと思う。 自分の中のイメージだと大体の人は1Lのペットボトル分生きている。 だから、私は彼が転んだ時には一滴の水を分け、車に轢かれそうになった時はコップ半分ぐらいの水を分けている。私が後どれぐらい生きれるかはわからない。だけど彼には自分より長く生きていてほしい。 彼は車に轢かれそうになっても結局は轢かれないのだから、もしかしたら十分に水が残っているのかもしれない。 だが分けずにはいられないのだ。 だって彼のことが大好きだから。
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