二人の日課

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 それは新雪降り注ぐ日のこと。肌寒い街の中を、談笑しながら歩く二人の少年少女がいた。 「──さて、小腹を満たしたことだし。そろそろ師匠のところへ行きますか」 「まったく。アーラはマイペースなんだよ。寄り道してたなんてことが師匠に知られたら、なんて言われることやら……」 「あはは。ツバサってば心配性だなぁ。少し寄り道したからってバレやしないよぉ。大丈夫、大丈夫」 「はぁ。その根拠は一体どこから湧いて出るんだか」 「根拠とか理屈とか難しいことはワタシには分かんないよぉ。ツバサと違って、ワタシはお勉強が苦手なんだもん」 「授業中に居眠りしておいて、苦手も何もあるか。今日も先生に注意されてたじゃないか」 「だって、公式とか言われたって覚えらんないもん。ワタシは魔法が使えればそれでいいのっ」 「魔法だって勉強が必要だろうに。ちなみに、今日の分の課題はどうだった?」 「バッチリ。五大元素ぜんぶの生成が出来るようになったよ」 「本当か! 僕なんてまだ三つしか出来てないのに……才能の違いかなぁ」 「そんなに大したことじゃないよ。ワタシでも出来るんだから、ツバサもきっと出来るようになるよ。大丈夫、ワタシが保証するからっ」 「まったくもって信用できない保証だよ、それ」  そう言って、ため息を吐く少年。しかし、その一方で少しはにかんだ表情を見せる。  それからも、他愛ない会話が続いた。そうして少年少女は、とある一軒の屋敷の前に辿り着く。庭の草木は鬱蒼としていて、建物の外壁には蔓がこびり付いている。なんとも陰鬱な雰囲気の漂う場所だった。 「うぅ、寒かったぁ。修行前にあったかいココアが飲みたいよぉ」 「そうだね。師匠に頼んだら淹れてもらえるかな。いや、もしくは『そんなもん、お前たちで淹れなさい。私を顎で使うとは百年早いわ!』とか言われそうだなぁ」 「あっ、今の喋り方、師匠にそっくりだね。あとで師匠に見せたら喜ぶんじゃない?」 「それこそ怒られちゃうよ……」  会話がひと段落ついたところで、二人は屋敷へ入っていく。そして木製の扉をギィ、と開ける。 「「お邪魔しまーす」」  今日も今日とて、二人の『魔法講座』は始まるのだった。
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