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遠洞曰く、夢の街とは人々の夢が集まった出来た街であり、そこに行けば色々な人の夢が見られるとのことである。
要は、一昔前に流行っていた都市伝説というやつだ。彼女はネットで拾ったオカルト話の検証をしたいのだという。
(人って見かけによらないな)
正直、中間にしてみればあまり興味のない話であった。だが、彼女に対してかなり好感を持っており、その彼女が目を輝かせながら楽しそうに語る空想話に思わず続きを促してしまう。
「でも、なんで僕なの?他にも付き合ってくれそうな人いそうだけど。オカ研の連中とか」
「それはね、中間君入学したとき、最初のクラス会で最近見た夢について話そうっていうのあったでしょう?それでその時に中間君、中学校から夢なんか見てないから将来の夢を話したって聞いて、あっ、話してくれたのは栗原湖華さんね。友達なの。それでね、もしかしたら興味持ってくれるんじゃないかなと思って声をかけたんだ」
「あー、要するにその街に行くと昔見てた夢が思い出せるよって話?」
「そういうこと!子供のころ見てた夢って面白いものが多かったでしょう?気にならない?」
全然気にならないが楽しそうな彼女に気を使って中間は曖昧に返事を濁した。
「本当はね、友達も呼ぶつもりだったけど、みんな予定会わなくて。でも、どっちにしても中間君は誘うつもりだったよ」
「なるほど、よくわかった。いいよ、付き合うよ。どうせ暇だしね」
中間の返答に少女が笑顔を見せる。中間はそれだけで駄賃には十分だろうと思った。
階段を降り切った二人は、そのまま昇降口に向かう。
ぽっかり開けた大きな出口は夕焼けに染まり、その向こうからは運動部員たちの声が聞こえてくる。
「ありがとう!中間君」
「・・・その街ってどうやって行くの?夜中の12時にあるはずのないホームから電車に乗るとか」
「そういうのもあるけど、今回はもっと確実な方法だよ。夜に小道の奥にある鏡の中を通っていくってやつ。駅前のビル街の路地で見つけたんだ!」
「へぇ、そりゃ随分と近場だね。楽そうでいいや」
「ただね、暗くならないとだめだからちょっと駅前で時間潰そう」
「・・・じゃあ、新しくできた百貨店、行ってみる?あそこなんでもあるっぽいし」
今後の予定も決まり、後は他愛のない話をしながら校庭へ出る。
(まぁ、どうせただのオカルトだろうな)
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