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楽しみにしている遠洞には悪い気もするが、中間はやはり信じてはいなかった。
入口の鏡を見つけたという彼女の話も、結局はたまたま条件の合う場所があったというだけだろう、と軽く考えていた。中間にとっては都市伝説の調査ではなく、楽しくてかわいい同級生とただちょっと遊ぶ、そういった類の青春イベントだった。
まさに夢のような機会である。中間は目的地の情報をスマホで検索して、彼女に見せながら遊びの予定を詰める。
彼女には申し訳ないが、夢の街自体に中間は少しだけ嫌悪感を覚えていた。
他人の夢を覗き見るなんて悪趣味な気がしてしょうがない。
夢なんて寝てる間に見るくらいがちょうどいい。起きている間になんて見てたまるものか。
心の底から中間はそう思った。
「あった、ここだよ!ここ」
遠洞がビルとファストフード店の間の路地の前でぴょんぴょんと跳ねる。
楽しい時間もあっという間に過ぎて、すぐ彼女の案内で例の路地までやってきた。昼間でも暗いであろうその道は、陽の光が失せてしまったせいでもはや洞穴の入口のような有様だ。
「よし、奥にいこう!」
意気揚々と進む彼女に並び、中間は予め持ってきた懐中電灯をつけて進む。
「中間君、怖い?」
「まぁ、変質者がいそうで怖いね。遠洞さん、まさか夜に来たりしてないよね?」
「ないない、危ないもん。噂だと昼の間は鏡の状態で夜になると入口になるって言うから陽の出てるうちに色々な場所を探したの」
(昼でも危ないだろ、ここは)
あまりにも危機感のない遠洞の答えに途端に不安になる。一本道ではあるが、後ろから不良集団でも来たらどうしようもない。自然と周囲の気配に敏感になるが、特に何もなくやがて遠洞が嬉しそうな声を上げた。
「あった!」
懐中電灯が照らす先には確かに突き当りに人ひとり入れそうな大穴がぽっかり空いていた。
駆け寄った遠洞が中を覗き込む。
「階段があるよ。下に降りるみたい、行ってみよう!」
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