裏路地の奥は夢の中

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異変に気付いた遠洞が振り返り、申し訳なさそうに中間の顔を覗く。 「ごめん・・・私のせいで壊れちゃった?」 「いや・・・たぶん、電池切れだと思う。あまりつかってないやつだから」  中間が懐中電灯をしまうと代わりに遠洞がスマホのライトをつける。 「・・・いくつもり?」 「え、まぁ・・・だめ?・・・ちょっとだけ!電池10%分だけにするから!」 「離れて戻ってこれるの?」 「大丈夫!こんなこともあろうかとちゃんと準備してきたから!」  遠洞の鞄から出てきたのはかなり大きめのビニールテープと吊り下げる用のフックのついたブロック型の重りだった。 「学校の鞄に入れてきたのか、こんなもの」 「うん、今日一日で3日分の筋トレできた感じ」  さすがに呆れる中間のことなど気にせず、階段の傍に重りを置きフックにテープを結びつける遠洞。 (・・・諦めるか) 「10%だけにしてくれよ」  遠洞がとても楽しそうに笑う。それにつられて中間も笑う。そして、暗闇に向けてまた二人で歩き出す。 「ありがとう!よろしく頼むよ、ジェイソン君」 「何それ?」 「いや、ヘンゼルよりは合うかと思って。ジェイソンとマドモワゼル。どお?」 「付き人みたいで嫌だな」 「厳しいな~。なんでもいいけど、相棒ってこと」 「夢の中だけの?」 「おお、それかっこいいね。超クール。君がたとえ道に迷っても僕が救ってあげるよ。このビニールテープでね」 「頼りなさすぎない?もっと丈夫そうなのなかったの、布製のやつとか」 「いや、長いのこれしかなくて。でもいいやつだよ、蛍光色だし、ほら黄色、光るよ!」 「それはすごい。でも、関係ないでしょ、それは」  ライトがあるとはいえ、視界をほぼ奪われている状態だと不安も緊張もよりいっそう増すものだが、くだらない話のせいでかなり精神的な余裕ができる。 道しるべは闇に溶けてすぐ見えなくなる。 しかし、物理的には彼らの通った道に存在するのだ。帰る道さえあれば確保できればさほど暗闇も怖くはなかった。 「ちなみにこのテープ、何メートルあるんだ?」 「800メートル」 「・・・10%以上は付き合わないからな。絶対に」
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