0人が本棚に入れています
本棚に追加
闇をぬけたその先は一転して明るかった。
「うわぁ、うわぁ~、うっわぁ~~~!!」
遠洞が初めて夢のテーマパークへ行った幼稚園児のようなリアクションをしている。
(まぁ、無理もないか)
リアクションこそ薄いが中間も結構感動していた。
二人の目の前に広がるそれは規模と様相は新宿に似ている。二人のいる場所はちょうど駅前あたりだろうか。要は大きな街だ。
外套はたくさんあり、オレンジ系の温かみのある光が街を照らす。
そして、
「中間君、すごい!あれ、虎!」
「ほんとだ。大型動物と肉食動物は車両扱いなのか・・・」
彼女が指さした先では、渋滞中の道路を車を踏み台にしながら飛びぬける虎が一匹、そのほかにも車の間に大型の動物がちらほら見える。
車の形状もさまざまであり、家やデパートまで足や車輪を付けて信号待ちをしていた。
(なるほど、夢の街か)
納得する。込み合った歩道には普通の人もいるが、半身が動物だったり、口紅で口がテカテカになっているでかいカエルだったり、空にも妖怪みたいなやつや太ったおっさんの妖精が「飛翔通勤サイコー」とのたまりながらふわふわ浮いていたりと、とにかく夢に出てきそうな人やモノが町中に溢れていた。
(スタンダードなもんからゲテモノまでなんでもあんなー)
「それでこれからどうするの、遠洞・・・遠洞?」
返事がない。嫌な予感がして振り返る。
(あいつ・・・どこいった!!)
予感的中。ため息をつく。幼稚園児は1秒目を離しただけでいなくなるというが、まさにこれがそれである。
一応、周囲を見回してみるが、目に見える範囲にはやはり姿はなかった。
さて、どこを探そうかと中間は考える。行きそうなところの検討などつくはずもないし、興味の赴くままにふらついてる可能性が高い。本当は今いる場所から動くべきではないのだろうが、あまりにも視界に入る光景が不気味すぎてとりあえず静かな場所へ移動したいというのが本心だった。
最初のコメントを投稿しよう!