1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

 授業が終わり、僕は身支度を整えながら窓の外を見た。雪が舞っているが日差しがあり、不思議と温かかそうだった。最後に帽子をかぶり、学校を出て行く。さすがに吐く息は白かったが、日の当たる場所を歩いていると温かい気がした。煉瓦造りの街を進み、通りの坂を上がっていると、見覚えのある後ろ姿があった。大きなリボンをした少女の足取りは軽く、跳ねるように坂道を登っていく。 「おーい」  僕が呼びかけると、すぐに彼女は振り返る。その手にはホットドッグを持ち、それを食べようと大きく口を開けたまま静止していた。間抜けな絵面なのに、それが彼女というだけで微笑ましい。 「いったい何の用?」  口を開いていたことを誤魔化すように顔を背けた。彼女に歩み寄ると、ソーセージとケチャップの匂いに喉が鳴る。そういえば、昼食そんなに食べてなかったな。それを思い出すと、今度はおなかが鳴った。咄嗟におなかをおさえると、彼女は鼻で笑いながらも持っていたホットドッグを差し出す。 「もう、しょうがないわね。ひとくちだけよ」 「え、いいの?」 「でも、ひとくちだけね」  彼女に差し出され、思わずそのままかぶりついた。肉厚のソーセージと甘酸っぱいケチャップが口を満たす。噛んでいくと新鮮なレタスの味やソーセージの油やケチャップの染みたパンが、さらに食欲をそそった。無意識にもう一度かぶりつこうとすると、ホットドッグは彼女の手元へ引き戻される。その表情は呆れていた。 「だから、ひとくちだけって言ったでしょ」  そう言って彼女もホットドッグを齧る。口元にケチャップをつけながら唸る彼女は笑顔だ。宣伝でもしているのか、と言いたくなるほどの微笑みに羨ましくなる。 「えー、そんなこと言わずにもうひとくちだけ」 「・・・・・・ひとくちじゃなくて、一つ、ううん、何個でも買ってあげるわよ」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!