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 ケチャップを拭った彼女が僕を見つめた。表情は一変して涙目だ。 「だから、必ず戦争から帰ってきて」  潤む瞳にはゴーグルのついたパイロットキャップをかぶる自分が映った。パイロットの訓練学校に通う僕はまもなく戦争へ駆り出される。夢見ていた幼い頃には思いつかなかった。僕に涙を隠すように彼女は再び顔を背ける。ホットドッグを持つ手の震えが本心を表しているようだった。それでも、彼女の口ぶりは明るかった。 「ごめん、辛気くさい話をしちゃって。今のは忘れて」 「約束する。必ず帰るよ」  僕の一言に彼女が顔を向けると、その頬は涙で濡れていた。僕は言葉を続ける。 「だから、帰ったら一緒にホットドッグ食べよう」  すると、彼女は空いた手で涙を拭い、先ほどのように笑う。 「うん、約束ね」  その笑顔は街を照らす太陽よりもまぶしく温かかった。
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