壊して治して俺の物

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昔から 壊したものを治すのが好きだった 「これ治してくんね?」 「貸して」 治したものは特別な気がして 少しだけ 自分の物になった気がして だから そうしたかったのかもしれない 「嫌だったら突き飛ばしていいよ…」 「…嫌じゃない…よ…」 窓の外で ヘリコプターの乾いた羽音がなっていた まだそう遠くない ごく最近の話だ 「ごめん泰成…!もう少し後ろさがれる…?」 「別に守んなくていいって。つかお前俺より背低いじゃん…」 「いや…俺が帰んの急がせたから…いって!」 「おま…!デコ怪我して…」 「いっつ…大丈夫だから…」 額から出てる血が 痛々しくて 失うのは怖くて 「…」 その傷を掻き毟りたくて 「いっ…!たいせ…っ!」 その傷を治したくて キスをした 「んっ…!っ……はぁ…はぁ…っ!」 「…今度は俺の背中守ってて」 「…うス」 素直なこいつを 「…はぁ……」 めちゃくちゃに壊したい 「…泰成…」 「ん…?」 それで治して 「続き…シたい…」 「…そこの潰れた店でいい?」 「うん…」 俺の物にしてしまいたい ガシャンっ 「ここ、潰れたの一年前だっけ」 「あぁ。良いおばさんだったのにな」 「うん…」 「んっ…!ふっ…あっ…!」 「寒い?」 「え…別に…」 「…これ着てろ」 そうやって 壊されたことない 汚れのない瞳で見られると 抱きしめずにはいられなくて 「…泰成…もうちょっと…このままで…」 「…」 このまま挿れたいけど… 無理だよな… 「寝っ転がって」 「…」 まだ震えてる… 「まだ寒い?」 「…寒く…ない…けど…」 「…寒いんじゃなくて怖いのか」 「っ…!まっ…て…!」 「…ゴメンな。もう少し力抜いて」 「んっ…いっ…!」 「指噛むなよ。野球できなくなるだろ…」 可愛い… このまま 動く気力も失うくらいに壊して 治して そうすれば いつか
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