爆ぜる心を縛り、貌を成す

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 竜樹の足に何かが巻き付いて行く手を阻んだ。左足首に、呪いが書き込まれた細く長い紙が巻き付いている。いつの間にか車の車輪にも紙が巻き付いており、車は、ぎ、ぎ、と音を立てて動けずにいた。  大蛇が結界を破った時にくすべが背にひいていた紙だ。紙の先は……くすべが腕に絡ませている。 「捕まえた」  くすべは静かに言った。  大蛇に結界を破られる前に自ら結界を解き、縛りの呪いのかかった紙をわざと地面に残したのである。 「場慣れしているようだな」  竜樹は冷静だった。 「また一つ、認めてやろう。お前は確かに東のろくでなし共とは違う。だがな、まだ足りん」  竜樹は懐に手を入れ、そこから木でできた短刀を取り出した。柄が見えた瞬間、 「バク!!」  くすべは叫んだ。すると竜樹の懐が突然膨れ上がり、凄まじい音を立てて爆発した。  大きな爆発音が炸裂した。びりびりと空気が震え、耳だけでなく全身を叩いた。もうもうと黒い煙が上がり、焦げ臭いにおいが鼻をついた。 「竜樹様!!」  くすべの背後で男の声がしたが、男たちには竜樹を助けに行く余裕はない。 「俺に何が足りないわけ?」  顎を上げ、にぃ、と口角を上げた。  黒煙が晴れると上半身をあらわにした竜樹が片膝をついていた。腹から胸の辺りが赤くただれており、膝をついている位置も立っていた時よりだいぶ後退している。 「でかい蛇に仕込んでおいたんだ。さすがに避けらんないでしょ?」  白い大蛇に触った時、顎の下あたりに『爆』と書いた紙札を貼っておいたのだった。強い式は外に出しておくだけでも力を使う。早々に戻すと踏んだくすべは、大蛇に仕掛けをした。竜樹はそうと知らずに大蛇を戻したため、懐で大蛇の封印された巻物が爆発したのである。 「小僧……」  竜樹の瞳が青く光る。  鼓膜は破れているだろう。皮膚はただれ、肋骨も何本か折れているだろう。きっと指一本動かすのですら辛いはずだ。それでも竜樹は倒れなかった。鋭い瞳でくすべを睨み付けている。 「……タフなジジイ。けど、さすがにもう、詰みだよ。爆発したのはでかい蛇が封印されてた巻物。この意味、分かるでしょ?」  ふいに竜樹の背に冷気が這った。
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