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右手に打刀を握り、紺のキルティングコートを着て、青灰色のスラックスを脛あたりまである編み上げブーツに突っ込んでいる、体躯の良い男。
角 銀竜(かく ぎんりゅう)だ。東 くすべと並んで、当主東方 竜臣の左右腕が一人である。
銀竜は風のようにあっという間に車に近づくと刀を抜いて切りかかった。
「む!?」
切り捨てようとしたが、結界に跳ね返されてしまった。
「ふう」
崩した体制を一旦整え、銀竜は低く腰を落とした。車は止まらずに走っていく。
刀を鞘に戻し、左手で鞘を掴み、右手を柄に添える。
一呼吸。
ぐっと力を込めたつま先が、一歩、二歩と地面を蹴る。地面を蹴る感覚が短くなり、加速する。瞬く間に再び車に近づいた。
銀竜の身体が浮いた。
身体が左によじれる。
「東の一刀流……」
柄を掴んだ手に青筋が浮き、青みを帯びた目がギラリと光った。
「牡丹!!」
一閃。
勢いよく引き抜かれた刀身が結界を破り、真横にバッサリと車を切り裂いた。
「バカ!! 女の首も切れたらどうすんだ!!」
くすべが叫んだ。
「む、そうか……」
銀竜はしまったという顔をした。
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