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後も先も見えなくなるくらいに熱中した。 ピッチャーだったのだ、自慢ではないが大学か就職くらいは野球でできるくらいには上手かった。 チームメイトよりもベスト4以上のチームにいる人間と仲が良かった。 チームメイトとは2年生になってから以降の会話を覚えていない。それよりも狙ったコースにどうやったら投げ込めるか。 ストレートの質はどうやったら高められるか。 他人よりも大きく、独特に曲がったカーブとシュートでどうやったらイチローを三振に取れるようになるか。 それだけを考えていた。 キャッチャーの名前も覚えていない。 大体、1ヶ月を過ぎると自分と組めないと言い残して他のポジションに去った。 監督は「もう少し相手のことも考えろ」と注意された。 雑魚に合わせて何故、自分のレベルと下げなければ行けないのか? 監督のことは早々に無視するようになった。 バカには何を言っても無駄と思うようにした。 それよりもカーブはもっと鋭く、早く曲がるはずだった。 ストレートは150キロに行けるはずだった。 高3になる時、ピッチャーを外された。 夏の大会が始まる1ヶ月前のことだった。 意見が合わなかったキャプテンが他の部員と監督を丸め込んだらしい。 ベンチ入り発表の時、誰も何も言わなかった。     
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