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エースナンバーの1は名前を知らない奴に与えられた。 確か、半年前に入ってきた新しい顔だ。 自分には背番号がなかった。 「すまない」、監督はそれだけ言い残した。 シュートはもっと早くなるはずだった。 清宮はそれに仰け反るはずだった。 身につきはじめていたフォークボールは大谷の目を丸くさせるはずだった。 監督とキャプテンを殺せば全ては元に戻るのか? バカに何を言っても仕方ない。 結局、こいつらを受け入れたチームメイトも自分にはふさわしくなかったのだ。 高校はそれまで1日たりとも休んだことはなかった。 その日以降、自分の高校野球が終わった日以降、学校に行く日は減った。 休み方もサボり方も下手だった。 小学校から野球だけを考えていたのだから、本当に何も知らなかった。 どうやら全体の三分の二を出席していれば卒業できたらしい。 学校にはいかなくなったが、いつの間にか卒業できた。 最後の夏に出ていない人間が野球で進学できるはずもない。 必然的に浪人だった。 行くなら大学しかなかった。 親が何を言ったのか覚えていない。 多分、何を言っても無駄だと思われたのだろう。 そんな親を納得させるには国立大学に行くしかなかった。 勉強なんてしたこともない。国立大学の難易度も知らない。     
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