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抱いた女の名前も遊んだ同級生の名前も、ディベートした同期の名前も覚えていない。
大学は二期制だった。
前期が終わる頃、男の友人は消えた。
女だけが近くにいた。
1ヶ月くらい、部屋に居座るヤツもいた。
ニンテンドースイッチを持ち込んで、セックスをする時以外の時間をマリオカートで潰した、やたらと甲羅をぶつけられるのに、自分はバナナしかないことが腹立たしいゲームだった。
後期に入ると、居座る女と身体が変わった。
どうやら別人らしい。
元カノと同じゲームは嫌だったらしく、スーパーマリオオデッセイを持ち込まれた。
帽子がなんであんなにクルクル回るのか理解に苦しんだ。
バナナというスターというのか分からないがそれを3個ほど集めると吐息が耳に近づいた。ゲーム終了の合図らしい。
そんな謎のサイクルが1年続いた。
筋トレの習慣は消えなかったが食事量と飲酒量が増えた。
バイトで着るスーツのベルトの上にお腹が少し乗るようになった。
カーブはもう、曲がらないだろう。
シュートはもう、曲がらないだろう。
ストレートはもう、重力に負けて落ちていくだけだろう。
そして、とある春の日
ナポリタンの空きケースの横に十三人目の同居人が転がっていた。
どうやら二度と動かないらしい。
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