ストラックアウト

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ストラックアウト

カーブが自分が思うよりも鋭かった。 身体が重くなってしまったせいか昔よりも縦の変化になっていたが、悪くはなかった。 シュートの切れ味も悪くなかった。 高校時代とは比べることも出来ないが、案外近いものがあるのではないか。 ストレートは133キロだった。 140キロ後半だった高校時代と比べて遅くなったが目も当てられないほどひどいものではなかった。 「君が大井裕翔くんかい?」 近所のそれなりに規模が大きいバッティングセンターにいた。 2週間前に部屋で死んだ同居人の件で大きく話題になってしまったが、自分には殺す動機も手段もなかった。 現代の法医学とやらに最大限に感謝した。 「はい」 その代わりに増えたのが、このように声をかけてくる輩だった。 週刊誌の記者という存在がやたらと増えた。 「三枝悠里さんの彼氏だよね?」 ストレートが134キロになった。 しかも、9番を抜けた。 最近は稼ぎが全てここのストラックアウトに消えていた。 何回もパーフェクトを達成した。 変化球のキレも悪くない。 「いわゆる愛憎のもたれってヤツかな?」 このままでは138キロまでだな。     
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