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初球の投球モーションに入った頃だった。
記者がブースに殴り込んできた。
初球は綺麗に1番の的を捉えた。
今できる最高のストレートだった。
その後に、自分の頬に痛みが走ったのだがどうでもよかった。
「テメェ・・・人殺しのガキのくせに大人なめんてんじゃねぇよ」
2球目はカーブにしよう。
7番、右打者の外角低めを撃ち抜こう。
インコースからアウトコースに行くような曲がりはないが、真ん中高めから外の低めに行くくらいの変化はある。
「何、すました顔でシカトこいてんだ? オォ?」
縫い目に指を合わせるべきか、合わせないべきか。
腕の捻りはどうするべきか。
体の運びはどのようにするべきか。
鈍りきった身体でも出来ることはたくさんある。
あの、お客様、他のお客様の迷惑になりますので・・・。
そういう店員の声に記者の怒声は静かになった。
チッという舌打ちと共に記者はその場を後にした。
その五分後、狙い通りにパーフェクトを達成して次の日の無料券を確保した。
「オィ、よくもコケにしてくれたな」
バッティングセンターを後にしようとしたところを待ち伏せされたいた。
「殺していません、彼女じゃありません、帰ったら死んでいました」
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