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ここは記憶の集積所。終わりを迎えて諸々の手続きを経た命は、一旦この場所に集められる。そうして生きている時に得た様々な記憶をここに置いて行き、新しい命として生まれ変わる準備を始めるのだ。僕達はそのこぼれた記憶を収集して、世界を構築する記録として残すか否かを、査定するのが仕事だった。
(……まあ、この調子だと、僕らが分担した箇所だけ、とても分厚い記録書が出来上がりそうだけど)
僕らはここに浮遊する記憶の主なデーターを、予め資料として与えられる。それを参考にしながら記憶を覗き、中身を観察していくのが普通なのだが、僕とペアを組む彼女の査定の仕方はとても変わっている。彼女はその記憶を外側から見るだけでは飽きたらず、自らに取り込んでみないと気が済まない。深く噛み締め、深く味わい、そうして美味しいと彼女が結論を出したものへ書記係である僕が○を記す。食べた記憶は彼女に吸収される訳ではなく、○印が付いた時点で記録庫に送られ、それをまた上のお偉いさん方が目を通すらしいのだが、その辺りの詳細についてはよく知らないので割愛する。
「あ、見て! あれも、おいしそう!」
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