プロローグ。開幕、直人と恋。

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「うおおおおお!」 パンパンパン!  叫びながらグロック17のスライドを引き拳銃を発砲する男。  グロックとは拳銃の名前である。乾いた拳銃の銃声が辺りに響く。  しかし小柄な黒い物体はその拳銃の弾丸をひらりとかわすと そのまま拳銃を持った男へと突っ込んできた。  そして小柄な物体は光る金色の牙で襲い掛かる。光る牙はナイフである。  黒い小柄な何かは足でブレーキをかけると銀色のナイフを口にくわえる。 どうも黒い物体は人間のようである。 「こ、こいつ人間か!? なんて身体能力だ!」  ベルゼブブのメンバーの一人が叫ぶ。叫んだと同時に黒い液体が頭の上からとんできた。  どうももう1人も殺されたようである。とうぜん黒い液体とは血である。 「はあはあはあ…」  最後に残った一人が過呼吸ぎみになりながら恐怖で肩で息をする。 「お、お前はジョンなのか??」  最後の一人が恐怖に侵食された心のなかで聞いた。そして地獄の中から 呟いたような電子音で声が返ってきた。 【いかにも我はジョンである。人間たちに制裁を与える存在である…】  それを聞いて、最後の一人が怒りをおぼえ叫ぶ。 「お前が人間たちに制裁を与える者だと!? ふざけるな! 殺人鬼風情が!」  世間では快楽殺人鬼と有名なジョンである。いつも三人殺して死体を二体その場に残す。  その二体は切り裂かれた酷い死体となって残される。  そして最後の一体はどこかに行って見つからないのだ。  世間ではジョンがいつもどこかに持っていっていると言われている。  月夜が辺りを照らし始める。少し見えるようになってきた。 「はあはあはあ…」  ベルゼブブのメンバーが肩で息をしながらジョンのほうを見る。  ジョンは凄まじく小柄で小さかった。そしてジョンは突然仮面を外しはじめた。  仮面の下から長髪の少女の顔が出現する。そして少女は喋った。 「こんにちわ☆ わたしは恋(れん)と言う者です。 今宵は良い月夜ですね☆」  意外にも平然と喋る少女。赤い血を顔にまといながら美しく、そして愛らしく…。
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