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旅立ちの日に蓋を開けた
僕はもう二度と、日没後に西の空は見ないと決めていた。あれが一番星だと教えてくれたのが、君だったからだ。けど、卒業式の日の帰り道で、感極まって空を見上げたのが失敗だった。今日に似つかわしくない想いが溢れて止まらない。式中も、君がいなくなった夜にも泣かなかったのに。忙しなく行き交う人々の中で立ち止まって、君に伝えられなかった想いを、小さく吐き出した。僕はもう二度と、見ないふりはしないと決めた。
『旅立ちの日に蓋を開けた』
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